
大切な人を亡くしたあと、多くの方が「こんなにつらいのは自分だけではないか」と感じます。
何も手につかない、涙が止まらない、逆に何も感じない、眠れない、食欲がない、周りに会いたくない――こうした反応は珍しいものではありません。悲嘆、いわゆるグリーフとは、喪失体験によって引き起こされる心の葛藤や苦悩であり、感情だけでなく、身体、考え方、行動、人生観の面にも影響が及ぶと説明されています。自治体の案内でも、悲しみ、孤独感、自責感、怒り、不眠、食欲不振、集中しづらさ、人に会いたくなくなることなど、さまざまな反応が起こり得るとされています。
グリーフケアとは、そうした悲しみを「なくす」ことではなく、その人がその人らしく悲しみを抱えながら生きていけるよう支える考え方です。
すぐに元気になることを目指すのではなく、無理に立ち直らせようとしないこと、気持ちを安心して出せる場をつくること、必要に応じて専門職につなぐことが大切だとされています。遺族支援の手引きでも、悲嘆の大きさや表れ方は人それぞれで、すべての遺族に同じ対応が当てはまるわけではなく、状況に応じた支援が必要だと整理されています。
この記事では、グリーフケアを、
の順に、できるだけ分かりやすく整理します。
悲しみの中にいるご本人にも、支えたいご家族にも、どちらにも役立つ形でまとめていきます。
大切な人を失った直後に、心や体に大きな変化が出ることは、基本的には特別におかしいことではありません。
悲しみだけでなく、怒り、罪悪感、安堵、恐怖、混乱、現実感のなさなどが入り混じることがあります。何も感じない時期があっても不自然ではありません。身体面でも、不眠、食欲不振、頭痛、だるさ、集中力の低下などが起こることがあると説明されています。つまりグリーフは、「泣いている状態」だけを指すのではなく、全身と生活全体に表れ得る自然な反応だと考えると分かりやすいです。
また、悲しみには「こうなれば正常」「このくらいで終わるのが普通」という一律の基準はありません。
死別の原因、関係性、看取りの経過、周囲の支えの有無、本人の体調や生活環境によって、感じ方も続き方も変わります。遺族支援の手引きでも、悲嘆は極めて個人的な経験であり、他者と単純に比較できるものではないとされています。
グリーフで起こる変化は、人によってかなり違います。
よく見られるのは、強い悲しみ、寂しさ、喪失感、自分を責める気持ち、怒り、将来への不安、現実感のなさなどです。故人のことばかり考えてしまう人もいれば、考えないようにしてしまう人もいます。自治体の案内では、何も感じられない、やるせない、孤独を感じる、自分を責める、怒りを感じる、といった心の反応が例示されています。
体の反応も少なくありません。
眠れない、早朝に目が覚める、食欲が落ちる、疲れやすい、動悸がする、持病が悪化するなど、悲しみが体に強く出ることがあります。行動面では、人と会いたくなくなる、片づけができなくなる、逆にじっとしていられなくなる、故人の持ち物に強く執着するなど、さまざまな変化が起こり得ます。こうした反応は、喪失に対する全人的な反応として整理されています。
グリーフのときに、本人が自分を苦しめやすいのが、「もう泣かない方がいい」「そろそろ元気にならないといけない」と急ぎすぎることです。
周囲からの何気ない励ましでも、「いつまでも引きずらないで」「前を向いて」と言われると、悲しみを出しにくくなることがあります。支援の手引きでは、すべての遺族に同じ専門的ケアが必要なわけではない一方で、その人の状況に応じた普遍的なサポートやセルフケアが重要だとされています。つまり、無理に立ち直らせることより、今の反応を否定しないことの方が大切です。
悲しみは「終わらせるもの」ではなく、少しずつ付き合い方が変わっていくものだと考えた方が、気持ちは楽になりやすいです。
思い出して泣く日があってもおかしくありませんし、笑える日が出てきても「忘れてしまった」と責める必要はありません。悲しみと日常が、少しずつ同じ場所に存在できるようになることが、現実には多いです。これは特定の形に当てはめるより、「揺れながら進むもの」と理解した方が近いです。
支える側がまず大切にしたいのは、「正しい言葉を言うこと」より「安心して話せる場をつくること」です。
災害時のグリーフケアの資料でも、おしつけがましくない態度で、話を傾聴し、共感し、相手のニーズに合わせること、そして必要な場合は専門家につなげることが大切だとされています。悲しみにある人に対しては、解決策を急いで示すより、「つらかったね」「ここにいるよ」「話したくなったら聞くよ」といった姿勢の方が支えになりやすいです。
また、支え方は一つではありません。
たくさん話したい人もいれば、今はそっとしてほしい人もいます。家事を少し手伝う、食事を差し入れる、役所や手続きの付き添いをする、定期的に短い連絡だけ入れるなど、実際の生活を支えることも立派なグリーフケアです。国立がん研究センターの遺族ケア外来でも、話をうかがい一緒に考えることで、その人らしく過ごせるよう支えることが案内されています。
支えたい気持ちがあっても、逆につらさを強めてしまう関わり方もあります。
たとえば、「もっと大変な人もいる」「元気を出して」「考えすぎだよ」と気持ちを小さく扱う言葉、原因や行動を責めるような言い方、気持ちを聞く前に結論を押しつける関わり方です。支援資料でも、おしつけがましくない態度、心の奥に立ち入りすぎないことが大切だとされています。悲しみの場面では、励ましよりも「分からないけれど、ここにいる」という態度の方が支えになりやすいです。
また、本人が話していない段階で遺品整理や気持ちの整理を急かすのも、負担になることがあります。
もちろん現実の手続きは必要ですが、感情の整理まで急がせる必要はありません。周囲は「今、何を手伝ってほしいか」をたずね、本人のペースに合わせる方が無理が少なくなります。
多くの悲嘆は自然な反応ですが、つらさが強く長引いたり、生活が大きく崩れたりする場合には、専門家への相談が助けになることがあります。
遺族支援の手引きでも、すべての遺族に専門的ケアが必要なわけではない一方で、悲嘆やうつの程度が高い人には専門的ケアが有効である報告があると整理されています。国立がん研究センターや赤十字病院でも、家族・遺族向けの外来やグリーフサポートグループが設けられています。
目安としては、
こうした状態があるときは、早めに相談先につながることを考えたいところです。専門外来、心療内科・精神科、かかりつけ医、地域の相談窓口など、支援先は一つではありません。
グリーフケアという言葉から、「早く回復させること」をイメージする方もいます。
けれど実際には、悲しみを消すことではなく、悲しみを抱えながらも、その人が生活を立て直し、人とのつながりを取り戻し、自分なりの意味づけを見つけていくことを支える考え方に近いです。グリーフの変容についての資料でも、感情を表現できること、他者や社会とのつながりを再認識できること、新しい行動の目的を持てることなどが整理されています。
だからこそ、泣かなくなることだけが回復ではありません。
故人を思い出しながらも少し食べられるようになる、人と少し話せるようになる、手続きや日常の用事が少しずつできるようになる、そんな小さな変化も十分に意味があります。悲しみがあることと、生きていくことは両立できるようになっていく――その過程を支えるのがグリーフケアだと考えると分かりやすいです。
大切な人を亡くしたあとに、心や体にさまざまな変化が起きるのは、不自然なことではありません。
生活葬祭センターとしては、グリーフケアで一番大切なのは、
だと考えています。
ご本人にとっても、ご家族にとっても、「こうあるべき」という形に合わせようとしすぎる必要はありません。
泣いていてもいいですし、話せなくてもいいです。
ただ、あまりにも苦しいときや、生活そのものが立ち行かなくなっているときは、支えを受けてよい、ということは忘れないでいただきたいです。
グリーフとは、大切な人を失った喪失体験によって生じる全人的な反応で、感情、身体、思考、行動、人生観などに影響が及ぶことがあります。悲しみ、怒り、自責感、不眠、食欲不振、集中力低下、人に会いたくなくなることなどは、よく見られる反応です。
グリーフケアは、その悲しみを消すことではなく、その人がその人らしく悲しみと付き合いながら生きていけるよう支えることです。支える側は、励ましすぎたり答えを押しつけたりするより、まず話を聴き、気持ちを否定せず、必要に応じて実際の生活支援や専門家への橋渡しをすることが大切です。
すべての遺族に専門的ケアが必要なわけではありませんが、つらさが強く長引く、生活が大きく崩れる、自責や希死念慮が強いなどの場合には、専門外来や医療機関、相談機関につながることが助けになります。悲しみには一つの正解も期限もありません。だからこそ、無理に急がず、必要な支えを受けながら進んでいくことが大切です。